口蹄疫について

口蹄疫をめぐる問題がネットを中心に話題になっていますが、大手メディアではあまり報じられていません。そんな中でTBSラジオ「DIG」で口蹄疫特集がありました。その中で東京農工大学農学部獣医学科の白井淳資教授と宮崎県児湯郡市畜産農業協同組合連合会の奥野福見参事が電話出演されていたので以下に要旨を書き起こします。



DIGポッドキャスト:5月12日(水)「口蹄疫を理解しよう」(TBSラジオ)
○白井教授の話
口蹄疫の症状
・40度以上の熱が出る。
・偶蹄類の動物(牛、豚、ヤギ、羊等)の病気。それ以外の動物(例えば犬・猫)には感染しない
口蹄疫では死なないが、乳牛は乳が出なくなり、蹄の間や口の中などが水ぶくれになり歩けなくなったり、食欲が減退する。
・2週間で口蹄疫は直るが、牛の場合2年間ほどウイルスが残る。症状が出なくても家畜にストレスが係る。
・ワクチンを何度も打たないと中々抗体が付かず効果が持続しない。
・何故殺処分するのか、感染力が強いため商売にならなくなるので殺処分する必要がある。


口蹄疫ウイルスについて
・強い伝播力で、空気感染する。
口蹄疫のウイルスは日常には無い。
・鳥や人がウイルスを運ぶ?
・10年前の宮崎の口蹄疫は700頭程度で収束したが、今回は7万頭なのは10年前の口蹄疫ウイルスは微弱なものだったため。10年前は和牛のみ感染で、和牛以外の乳牛、ホルスタインや豚、羊等他の偶蹄目には感染しなかった。2002年の韓国での口蹄疫は豚のみだった。ただし限定的な感染は例外的で標準的な口蹄疫は全ての偶蹄目が感染するタイプ。
口蹄疫に感染した動物の肉を食べても人には感染しない。人間の胃酸でウイルスは死滅する。特に牛肉はと殺後に熟成させる段階で酸性値を上げるため、口蹄疫ウイルスは死滅する。
・700万頭を殺処分した2001年のイギリスの口蹄疫の大流行は発見の遅れと多くの偶蹄目がかかる今回の偶蹄目と同じウイルスだったため。


口蹄疫への対策について
・現在宮崎県は早期発見囲い込みで殺処分という対策をしている。
・2002年の韓国の口蹄疫は発生源から3キロ以内の豚を検査なしで全て殺処分。
・日本は発病した農家と10キロ以内の農家の家畜が移動禁止という形。家畜は農家個人の財産なので勝手に殺せない。
・殺処分出来る頭数は法律で決まっている。また保障できる頭数分の予算が決まっている。
・今回の口蹄疫の流行はかなり大きい規模。まだ収束は難しい。
・効果的な方法は大規模に殺処分を行うほか無いかも知れない。
・オーストラリアで口蹄疫が発生していないのは検疫体制が発達しているから?農場への一般人の立ち入りが国土的な事情から制限されるから?


その他
口蹄疫の発症を理由に発症国からの肉の輸入を拒否できていたが、発症国になるとそういった拒否理由が通らなくなる。



○奥野参事の話
現状
・感染は収まっていない。今日も発見。
児湯郡管内、豚23万頭、和牛農家1000戸、繁殖農家頭数1万6000頭。
児湯郡管内で7万7000頭くらいが感染。今回の感染のほとんどが児湯郡
畜産農家は疲れきっている。国の早期対策を望んでいる。
・農家に出来ることは消毒の徹底他無い。
・可愛がっていた牛・豚を殺すのは忍びない。


問題
・殺処分してもウイルスは媒介するので、埋める土地が必要。
・殺処分した家畜を埋める為の土地が確保されていないので、殺処分されていない家畜が3万頭ほど残っている。
・自分の土地に埋めるが、和牛農家は土地を確保していたが、養豚農家は土地を確保できていない。
・自分で土地を買って、埋めなければならない。土地を確保しても距離があると移動もさせられない。
・行政や国に対策を要請はしているが、頭数が頭数なので現状では対応が追いついていない。
・感染しているとしても、殺処分が出来ない現状では殺せないので餌をあげ続けなければならない。
・現在は個々に畑などに自力で埋めて石灰をまくなどの対策しか取れない。重労働。
・農協としても手伝いに行きたいが、ウイルス拡大の可能性が高いためそれも出来ない。
・全額保障は法律で決まっている。最高限度額で牛1頭、49万円。今回はその5分の4の支払いなので最高で39万5千円にしかならない。
・子牛1頭、45万位。肥育費用に40万ほどで合計80万かかるので、全額保障といっても最高でも半分以下にしかならない。豚の最高限度額は3万5千円。
畜舎も建て直さないといけない。


国の対応
・前回は国の対応が早かった。今回は遅いというより全くなっていない。
・国からの消毒などが遅かった。前回は消毒などが早かった。
・県の規模では対応が間に合わなかった。
・前回、国会議員に頼んだらすぐ対応してくれた気がする。
政権交代したために対応が違うかなと思った。
・選挙区の議員は江藤議員(自民党)。野党になってから声が政府に届きにくくなったかもしれない。


原因?
・宮崎で口蹄疫が続けて起こる原因は肥育の飼料かも知れない。
・飼料の輸入先はオーストラリア、中国、韓国。
・一戸で飼っている頭数が多く、農家も偏在して集中している。


その他
・もっと報道して欲しい。もう少し政府も畜産を大事にして欲しい。
・宮崎産というだけで拒否されているなど、風評被害が起こっている。
・感染していない牛ももちろん安全だが、今現在宮崎県産の畜産品は出荷停止中。




聞き漏らし、聞き間違いなどあるやも知れませんが一応まとめ。また上記のリンクにポッドキャストがありますの気になった方はぜひ。両者のお話を聞いた限りで理解できたことは、

・10年前よりウイルスは強力。
・10年前より政府の対応が遅い。

この2点が今回被害が拡大した原因なのかもしれません。報道の問題に関してはツイッター上の地元メディアの方などのつぶやきまとめが一番有力なのかもしれません。



(16日追記)
口蹄疫感染の家畜の処分方法には焼却処分もあるようですが、焼却用の燃料や生焼けの可能性など難しい部分も多いようです。
http://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/eisei/usibuta/01/pdf/data9.pdf

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S26/S26F00601000035.html